当院での治療例
【皮膚科】
Case1 耳血腫
来院理由:右耳の先が腫れている。
処 置:10歳ボストンテリアのぽちんちゃん♀は耳の皮膚と軟骨の間に出血を起こし、血液が溜まってしまうことで耳が腫れていました。この病態のことを耳血腫と言います。
全身麻酔を必要としない局所注射療法を希望されました。
備 考:初診時に1回目の局所注射を行い、その1週間後にもう一度2回目の局所注射を行って完治しました。
耳血腫は発症したわんちゃんは痛がらない場合もありますが、腫れた耳に違和感を感じて耳をよく振ったり、ぶつけて皮膚が裂けて大量に出血が起きることで生活の質を落とします。
Case2 臍ヘルニア-犬-
来院理由:デベソのようなものがある。
処 置:飼い主様は、将来困らないならそのままも良いけどで避妊手術や去勢手術で麻酔をかけるならば、ついでに万一の病状進行の可能性を考慮して治しておきたいとのことでした。
備 考:臍ヘルニアとは出生後、へそ(臍とも言います)の部分の腹壁が完全に閉じず、そこから脂肪や内臓の一部が飛び出てしまう病気です。“でべそ”とは、臍ヘルニアのことをいいます。生まれつきのものである先天的臍ヘルニアと肥満や外傷などによって起こる後天的臍ヘルニアがあり、ほとんどの場合が先天的臍ヘルニアです。発症頻度の高い品種では、雌に多く発生することが報告されています。
Case3 臍ヘルニア-猫-
来院理由:おなかにしこりがあるとのことで来院されました。
処 置:この子のしこりは身体でいう臍(へそ)の部分の皮の下にあり、指で押すとしこりの内容がお腹の中にもどっていきます。戻った部位のお腹には本来あるはずの腹膜(筋肉の膜)がしこりの大きさ分だけ欠損していました。
外傷等が無いことなどから、臍の緒が取れた後、閉じるはずの隙間が開き、そこから脂肪などが出てきている臍ヘルニアと診断しました。
この子は診察時、症状が全くありませんでしたが、将来病状が悪化することも考えられるため、飼い主様は去勢手術と一緒に臍ヘルニア整復を希望されました。
備 考:術後はお腹の膨らみもなくなり、再発もありませんでした。
Case4 鼠径ヘルニア-犬-
来院理由:左足の付け根が腫れている。2日前から食欲も落ちている。
処 置:当院で鼠径ヘルニアの整復手術を希望されたチョコちゃんは、9歳4ヵ月になる未避妊雌のロングコートチワワの子です。各種検査で鼠径ヘルニアと子宮蓄膿症も併発しており、今回子宮蓄膿症の治療として避妊手術と鼠径ヘルニアの整復手術を希望されました。
備 考:術後は食欲も戻りました。手術後11日目で抜糸を行いました。
鼠径ヘルニアは様々な犬種で報告があります(Hayesら,1974)。診断方法として、片側または両側の鼠径部に膨らみが触知でき、用手にてヘルニア内容がヘルニア孔より腹腔内にもどることが特徴です。
腹部X線検査および腹部超音波検査などの画像診断は確定診断だけでなく、安全かつ有効な治療計画を立てる上で重要な手がかりとなる検査です。
Case5 猫の痊瘡(ざ瘡、アクネ、顎ニキビ、コメド:毛包を中心とした化膿性肉芽腫性皮膚炎)
来院理由:顎の下の皮膚が腫れてきた。一向に良くならない。
処 置:日本猫ヤマトちゃん♂の顎の皮膚は毛穴に溜まった皮脂が黒ずんで見えました。一部の皮膚には皮脂が溜まり、そこに炎症が起こして赤く腫れ、ボコボコしていました。これらの所見より、顎下のざ瘡と診断し、消毒やお薬治療を実施しましたが、改善が乏しいため、その次の治療としてひどいざ瘡の部分を切除し、切除した組織も念のため病理検査に提出することで腫瘍細胞などが検出されないかどうか調べる治療計画を提案しました。
備 考:ヤマトちゃんは手術後、帰宅してすぐにご飯を食べてくれ、傷口も気にせず、経過が良好なため術後10日目に抜糸を行いました。病理組織検査では腫瘍細胞は検出されませんでした。
ざ瘡は顎下や口唇に隣接した皮膚における猫に一般的な皮膚炎です。通常は無症状であり、毛穴に溜まった皮脂が黒ずんで顎の下に黒いゴマが付着しているように見えるのが特徴です。ヤマトちゃんの場合はさらに細菌が感染して炎症を起こしていたので、赤く腫れていました。この病態になると痒みや痛みが出ることもあり、後ろ足の爪などで引っ掻くことで局所に傷がつき、ますます病状が悪化する場合もあります。
Case6 尾の外傷(断尾)-猫-
来院理由:保護した猫で尻尾を怪我しており、保護した時からエリザベスカラーをしながら治療しているが、固定したエリザベスカラーを何度も外して、傷を舐めてしまいケージが血だらけになっている。
処 置:推定8カ月齢のもも吉ちゃん♂の尻尾は先端を含めた組織が一部欠損していました。尻尾の骨と神経が露出して痛みが伴うことなどによりストレスを感じ自傷行為に及んでしまうものと考えられ、内科的治療による治療の限界も考えられました。これらを考慮して断尾手術によって痛みやエリザベスカラーのストレスから解放してあげる方法を提案したところ飼い主様はこれを希望されました。
備 考:当院では断尾手術後、その日のうちにご飯も食べて、エリザベスカラーなしでも術創を気にしなかったため、次の日に退院としました。飼い主様は遠方にお住いのため、抜糸は手術より2週間以降に近医で行っていただくこととなりました。抜糸後、飼い主様が写真を送ってくださいました。もも吉ちゃんのお尻が可愛く仕上がってくれてよかったです。