当院での治療例
【生殖器科】
Case1 子宮蓄膿症-犬-
来院理由:ご飯が大好きなのにこの2日間おやつのみしか食べてない、震えている。
処 置:11歳のトイプードルのラクシュミーちゃん♀が来院されました。体温が40.0℃と発熱が認められました。各種検査により子宮蓄膿症による食欲不振、発熱と診断しました。
飼い主様は手術による根治治療を希望されたため、卵巣子宮摘出術を実施し、次日より食欲が改善し、退院されました。
備 考:日本の犬ちゃんの子宮蓄膿症の発症率は0.9-1.6%という報告もあります(多摩獣医臨床研究会, 1998)。高齢犬に多発し(8.5歳前後に多く、3-16歳で報告あり)、未経産犬に多発すると報告しています(Dow, 1958?1975)。子宮の膿の89%から細菌が検出され、大腸菌が最も多く検出されています。子宮蓄膿症は発情休止期での発生が多いため、発情期から5-90日間は注意が必要です。
超音波にて確認された拡張した子宮 |
摘出した子宮 |
摘出した子宮の内容物 |
Case2 停留精巣(潜在精巣、停滞精巣、停留睾丸、陰睾、片玉、片キン)-犬-
来院理由:去勢手術を希望したい。睾丸が片方しかない。
処 置:停留精巣は陰嚢内に精巣が触知されないのが特徴で、診断は容易です。停留精巣は腫瘍化しやすいため、飼い主様は病気の予防を目的とした去勢手術を希望されました。
備 考:日帰り手術で、約1週間後に抜糸を行いました。
停留精巣とは陰嚢内に精巣(睾丸とも呼びます)が入っていない状態をいいます。犬では、精巣が下降する正常な時期は通常10日齢までに起こるとされていますが、犬種によりいくらかばらつきがあるそうです。8週齢までに陰嚢内に精巣が触知されなければ、停留精巣と診断されます。
下降していない精巣は正常ではなく、特に腹腔内精巣では精子形成能の欠如が顕著であり、のちに精巣が陰嚢内に下降しても精子形成能は回復しません。通常の陰嚢内精巣の犬に比べて、停留精巣の犬では精巣腫瘍の発生率が9倍高くなること、Hayesら(1985)の報告では停留精巣の犬のうち約6%で精巣腫瘍を発生したとされています。お腹の中にある停留精巣がお薬で下降したという報告はないそうです。
Case3 停留精巣(潜在精巣、停滞精巣、停留睾丸、陰睾、片玉、片キン)-猫-
来院理由:去勢手術を希望したい。
処 置:アメリカンショートヘアのシルヴィちゃん♂は当時7カ月齢でした。去勢手術時の術前検査で左側の精巣が陰嚢内に触知されず、停留精巣と診断されました。停留精巣は腫瘍化しやすく、雄猫は性成熟するとマーキングも始まるため、飼い主様は去勢手術を希望されました。
備 考:日帰り手術で、約1週間後に抜糸を行いました。
停留精巣とは陰嚢内に精巣(睾丸とも呼びます)が入っていない状態をいいます。8週齢までに陰嚢内に精巣が触知されなければ、停留精巣と診断されます。両側の停留精巣よりの片側の停留精巣がよくみられます。停留精巣は陰嚢内に精巣が触知されずに鼠径部(骨盤と太ももの付け根)の皮下組織に埋もれているか、腹腔内にあるのが特徴です。海外では、動物病院に去勢手術のために持ち込まれた613例の猫のうち6例(1%)に停留精巣が見つかったという報告もあり、発現頻度としては高くないと考えられます。
下降していない精巣は正常ではなく、特に腹腔内精巣では精子形成能の欠如が顕著であり、のちに精巣が陰嚢内に下降しても精子形成能は回復しません。お腹の中にある停留精巣がお薬で下降したという報告はないそうです。
私見ですが、猫の停留精巣は鼠径部の皮下組織に埋もれている場合が多いと感じます。猫の停留睾丸は犬よりも睾丸が小さく、埋もれている鼠径部の皮下組織には皮下脂肪も多いため、摘出に苦労する場合が多々あります。
Case4 停留精巣(潜在精巣、停滞精巣、停留睾丸、陰睾、片玉、片キン)-猫-
来院理由:停留精巣を摘出したい。
処 置:スコティッシュ・フォールドのジェイちゃん♂は、当時2歳3ヶ月齢でした。かかりつけの動物病院で停留精巣と診断され、去勢手術を希望しましたが、片側の精巣が見つからなかったとのことでした。睾丸が残っているせいなのか、避妊済みの同居猫にマウンティングをし、首元を噛みつくので困っているとのことで、当院にて去勢手術を希望されました。
備 考:全身麻酔下にて、鼠径部の皮下から残りの睾丸を発見し、摘出しました。日帰り手術で、約1週間後に抜糸を行いました。術後は女の子の同居猫への後追いも無くなったとことです。
Case5 停留精巣-猫-
来院理由:生後6カ月齢になり、去勢手術を考えている。片側が停留精巣であり、かかりつけの病院では先生が少し乗り気でなかったので、当院で手術希望。
処 置:ノルウェージャン・フォレスト・キャットのバニラちゃん♂は、手術当日でちょうど7カ月齢になりました。健康状態は良好であり、当院での右側停留精巣摘出手術を実施しました。
備 考:全身麻酔下にて、鼠径部を探査し停留精巣が認められたため、摘出しました。日帰り手術で、約1週間後に抜糸を行いました。手術した当日の帰宅後も、元気が落ちることなく、晩御飯もしっかり食べてくれたとのことでした!
Case6 停留精巣-猫-
来院理由:停留精巣の摘出を含め、去勢手術をしたい。
処 置:ブリティッシュショートヘアーちゃん♂は、9ヵ月齢でした。右側の停留精巣と診断、当院での去勢手術を希望されました。
備 考:全身麻下にて鼠径部の皮下から右精巣を発見し、摘出しました。日帰り手術で、約1週間後に抜糸を行いました。帰宅した次の日に吐き気が出て、体調を崩されましたが、すぐに病院へ来院いただき回復しました。