当院での治療例
【腎泌尿器科】
Case1 会陰ヘルニア-犬-
来院理由:肛門まわりの皮膚が腫れていて、便が少しずつしか出ない。尿が出なくなり、吐いている。
処 置:クッピーちゃんは10歳のチワワさんで、去勢はしていない男の子です。各種検査にて肛門まわりの皮膚が腫れた原因は、肛門周りの筋肉が薄くなることで、お腹の中にある腸や膀胱が肛門近くの皮膚の下まで飛び出てしまう会陰ヘルニアを起こしていました。
飼い主様は会陰ヘルニアの整復手術、脱出してしまった腸および膀胱の整復および再脱出を防ぐ為の固定術、会陰ヘルニアの進行を抑える目的で去勢手術を希望されました。
備 考:クッピーちゃんは翌日に退院できたのですが、その後大腸炎を起こし再度入院治療を行いました。術後2週間で抜糸となり、現在は排便?排尿も絶好調です。
会陰(肛門のまわり)ヘルニアは、肛門近くの腸を支持する筋肉が萎縮することでヘルニア孔ができ、その孔を通って腸や骨盤?お腹の中にある臓器が肛門周りの皮下に脱出している病態をいいます。そのため、脱出した直腸内の便が正常に排泄できず、水分が吸収されて硬くなり、軟便などの柔らかい便を少量ずつしか排泄できなくなります。膀胱が脱出してしまった場合、尿道が屈曲して尿が排泄できずに急性腎不全を起こしてしまうこともあります。
Case2 会陰ヘルニア-犬-
来院理由:ここ1週間で急に肛門の右側が膨らんだ。食欲もあるが頻尿でうんちを出すときにいきんでいる。
処 置:11歳のジャックラッセルテリア 未去勢雄のまろちゃんは、近医にて会陰ヘルニアと診断され、セカンドオピニオンを希望され来院されました。各種画像検査・尿検査から、会陰ヘルニアによって蛇行した直腸に便が溜まり便秘を起こしていました。また尿道がヘルニア孔に引き込まれて屈曲し、尿の排泄障害によって頻尿を起こしていました。飼い主様は、根治治療を目的とした外科手術を希望されました。
備 考:術直後に腎臓の機能低下と術部周囲の広範囲な皮膚障害で体調を落としてしまったマロちゃんですが、術後3ヶ月である現在は、ヘルニアの再発もなく、腎臓機能も元に戻り、健康状態も良好です。会陰(肛門のまわり)ヘルニアは、肛門近くの腸を支持する筋肉が萎縮することでヘルニア孔ができ、その孔を通って腸や骨盤?お腹の中にある臓器が肛門周りの皮下に脱出している病態をいいます。そのため、脱出した直腸内の便が正常に排泄できず、水分が吸収されて硬くなり、軟便などの柔らかい便を少量ずつしか排泄できなくなります。膀胱が脱出してしまった場合、尿道が屈曲して尿が排泄できずに急性腎不全を起こしてしまうこともあります。
Case3 会陰ヘルニア-犬-
来院理由:4ヶ月前から細かい便が出るようになり、肛門の右脇が膨らんだ。その後便が出づらくなり、気張っているのに便が出ない。近医にて会陰ヘルニアと診断された。
処 置:10歳のイタリアングレイハウンド 未去勢雄のちょこまろちゃんは、近医にて会陰ヘルニアと診断され、セカンドオピニオンを希望され来院されました。各種画像検査から、会陰ヘルニアによって蛇行した直腸に便が溜まり便秘を起こしていました。膀胱も肛門側に変位していましたが、症状はありませんでした。飼い主様は、根治治療を目的とした外科手術を希望されました。
備 考:術後2日間は食欲が落ちてしまったちょこまろちゃんでしたが、その後はメキメキと回復し、術後10日目には抜糸することができました。術後、陰嚢がソフトボール大にまで腫れてしまいましたが、抜糸時には腫れが改善していました。現在はいきむことなく良好に排便できており、再発もありません。
Case4 会陰尿道造瘻術 猫
来院理由:尿道閉塞を繰り返すとのことで来院されました。
処 置:アメリカンショートヘアの2歳になるチップちゃん♂は、腎臓結石が基礎疾患に認められました。腎臓結石は食事で溶かすことができなく、とても厄介な病気です。腎臓でできた結石が膀胱に降りてきて、尿と一緒に排泄される際に尿道閉塞を度々起こしていることが分かりました。
お薬やご飯での治療で閉塞を解除するのが困難であったため、尿を排泄する出口を広げて、結石が効率良く尿から排泄されるようにする手術(会陰尿道造瘻術)を行いました。
備 考:術後合併症の少ない包皮粘膜を利用した手術で術後は閉塞を起こすことなく、8歳となる今でも再度、尿道閉塞は起こしていません。腎臓結石は尿で排泄させるしかないため、飲水量が増える処方食を食べてもらっています。
術後写真 |
Case5 外傷による陰茎損傷 猫
来院理由:おしっこがちょろちょろとしかでない
処 置:年齢不詳のオス猫さんで、怪我を負った状態で保護され、入院治療により一命をとりとめましたが、陰茎(おちんちん)の損傷が強く、尿が排泄される出口が目視できませんでした。
身体検査では肛門のすぐそばに瘻管ができている様子でそこから尿が滲み出るように出ていました。
手術により皮膚の下に埋もれている損傷を受けていない尿道を用いて、皮膚に新しいおしっこの出口を作りました(会陰尿道造瘻術)。
備 考:幸いこの子は入院治療後、新しい飼い主様が決まっていました。手術後1ヶ月経ったのちに、新しく飼い主様となってくださった方にお聞きしたところ、排尿も良好で元気にしているとことでした。
術前写真 |
術後写真 |
Case6 犬の慢性膀胱炎(過去の手術痕による膀胱壁の肥厚)と前立腺嚢胞
来院理由:頻尿が治らない。
処 置:8歳の未去勢雄のシーズー、ラッキーちゃんは各種検査で過去に膀胱の手術を受けた部位が腫れており、前立腺肥大と?胞、腎臓結石も見つかりました。
お薬治療で症状の改善が認められなかったため、膀胱の肥厚している部分をきれいに切除してあげる事で正常な膀胱の状態に戻す方法と前立線肥大および嚢胞に対しては去勢手術を提案しました。
備 考:術後2週目の抜糸時には排尿回数は1日4回ほどになり血尿も改善したとのことでした。術後の3ヵ月目の検診時は膀胱壁も正常な状態に戻りました。その後は食事療法を継続することで腎臓の結石も管理できています。
Case7 慢性膀胱炎(尿膜管の遺残)-犬-
来院理由:10か月前から尿がポタポタ垂れて、最近は頻尿症状がでてきた。近医にて膀胱が腫れているが診断がつかないと言われた。
処 置:5歳8か月になるウェリッシュコーギー・ペンブローグのもも太ちゃん♂。各種検査により、膀胱が広範囲に肥厚してしまい、膀胱に尿を貯める余裕がなくなったため頻尿症状が現れ始めたことが考えられました。尿漏れに関わる原因としては、長期にわたる膀胱の肥厚が膀胱の括約筋に関わる末梢神経に障害を与えている可能性もあると考えました。
腫れている膀胱壁を改善させるお薬治療を実施し、一部に改善が見えられたものの症状にあまり変化が認められないため、治療と病理診断を兼ねた膀胱部分切除手術を提案しました。
備 考:病理検査は“尿管膜の遺残を伴う慢性膀胱炎”であり、腫瘍病変は認められませんでした。異常な部分を切除して小さくなった膀胱は時間をかけて元の大きさに戻ります。切除する大きさによって、元の膀胱の大きさに戻る時間が変わります。元の大きさに戻るまで頻尿傾向となりますが、もも太ちゃんの場合は術後3カ月検診で大分頻尿は改善していました。
Case8 会陰ヘルニア
来院理由:数ヶ月前から肛門の右脇が膨らみ、排便排尿がしづらくなり、近位に受診したところ会陰ヘルニアと診断を受けた。今現在は、排尿ポーズをとった時に膨らみを押すことで排尿補助を行っているが、排尿補助時鳴くこともあり、会陰ヘルニアの根治治療を希望されて来院されました。
処 置:13歳5ヶ月齢の避妊済み雌のポプリちゃんは、各種画像検査から、会陰ヘルニアによって膀胱が肛門側に変位しており、膀胱に尿が溜まり始めると尿道が折れ曲がるため、排尿障害を起こしていました。直腸も蛇行しており、便秘を起こしていました。飼い主様は、根治治療を目的とした外科手術を希望されました。ポリプロピレンメッシュによる会陰ヘルニアの整復と、脱出した膀胱の整復するために正しい位置への膀胱固定術、蛇行した直腸を真っ直ぐにするため、直腸に近接している結腸の固定術も併用しました
備 考:ポプリちゃんは手術した直後から、自力での排尿もできるようになりました。手術した次の日からご飯をモリモリ食べてくれ、術後3日目には自力での排便を確認する事が出来たので退院としました。
会陰ヘルニアを罹患したわんちゃんのそのほとんどは雄犬に多いのですが、まれに雌犬にも認められる場合があります。
Case9 山本マロ 会陰ヘルニア
来院理由:およそ2年前に近医にて会陰ヘルニアと診断・整復手術を実施したが、術後も排便症状は改善されず、排便補助を行っていた。数日前に便秘気味となり、近医にて便軟化剤を処方・投薬を始めたところ、便が下痢となり、ずっと排便ポーズをとっていきんでいる。本日から尿も出なくなり、肛門から腸が出てきているとのことで来院されました。
処 置:12歳4ヶ月齢の去勢雄のマロちゃんは、各種画像検査から、会陰ヘルニアによって直腸が真下に変位して宿便を起きており、本来下腹部にある膀胱も肛門脇まで変位をしていました。便軟化剤により、強いいきみのせいで脱腸だけでなく、膀胱までヘルニア部に飛び出してしまったため、膀胱が移動した際に、尿道も屈曲してしまい、排尿ができずにいました。経皮的に注射で尿を抜き、膀胱の大きさを小さくしたところ、膀胱が腹腔内に戻り、尿道の屈曲も解除され、陰茎からのカテーテルも膀胱に届くようになりました。便軟化剤を中止してもらい、脱腸及び下痢が治癒した後に、ポリプロピレンメッシュによる会陰ヘルニアの整復と、脱出した膀胱の整復するために正しい位置への膀胱固定術、蛇行した直腸を真っ直ぐにするため、直腸に近接している結腸の固定術も併用しました。
備 考:マロちゃんは手術して3日目には自力での排便をする事ができるようになったので退院としました。今現在、排便及び排尿障害はないとのことです。
Case10 鷹野ちょこび 会陰ヘルニア
来院理由:およそ1年前に近医にて便秘(自力で排便が難しい、いきんでやっと固い便が出る)と診断され、その後は便軟化剤で症状が改善したが、1ヶ月前から内服治療をしても排便が困難になり、硬くなった便を指で掻き出してもらっている。自宅でいきむときに便が出ないで、泣き叫ぶので根治治療を希望。
処 置:チワワ 10歳2ヶ月齢の未避妊雌のちょこびちゃんは、身体検査および各種画像検査から、肛門から指を入れてすぐの直腸周囲の括約筋が薄くなっており、特に肛門から見て真下に位置する直腸の括約筋が薄くなっていることが分かりました。括約筋の力で排便されるはずの便が肛門手前で溜まってしまい、排便できない便は時間が経つにつれ、腸から水分が吸収されて硬い便となっていました。会陰ヘルニアと診断し、1年前は括約筋が薄くなってしまっても、まだ便軟化剤で排便ができた状態でしたが、ここ1ヶ月前から括約筋の脆弱化がより進行して宿便の量が増えてしまい、排便が困難な状態になってしまったと推測しました。治療方法として下垂および尾側変位した直腸を、ポリプロピレンメッシュ用いて、正しい解剖学的位置への牽引および修正する手術を提案したところ、飼い主様がこれを希望されました。
備 考:ちょこびちゃんは手術して2日目には自力での排便をする事ができるようになったので退院としました。今現在、便秘症状は改善されて、毎日順調に排便ができているとのことです。
Case11 山田ふくちゃん 皮膚尿道瘻-犬-
来院理由:2-3日前から尿がタラタラしか出ない。
処 置:イングリッシュブルドッグ 3歳1ヶ月齢の未去勢雄のふくちゃんは、身体検査および各種画像検査から、尿道に結石が詰まってしまったことにより、おしっこをしたくても結石の隙間を抜けて尿が流れ出ることができない状態となってしまっていました。尿道に詰まってしまった結石を一度膀胱に押し流すことで排尿状態の改善を図りましたが、結石が尿道に食い込んで摘出ができなかったため、新たにお股の部分に排尿口を造設する手術を提案いたところ、飼い主様がこれを希望されました。
備 考:ふくちゃんは手術して14日目には自力での排尿をする事ができるようになりました。ふくちゃんにできた結石はシスチン結石といって、ご飯療法では溶解することができず、永遠と尿中に形成させるものですが、大きく形成した排尿口から結石も順調に排出されている様子です。
Case12 まこちゃん 会陰尿道造瘻術-猫-
来院理由:尿道閉塞を繰り返すために何度も通院をしなくて済む治療を希望されました。
処 置:日本猫の7歳になるまこちゃん♂はトイレに入ったまま出てこない。尿がほとんど出ずにトイレでぐったりしているとのことで来院されました。
検査の結果、膀胱でできた結石が尿道に詰まり、尿が出なくなって苦しんでいました。尿道に詰まった結石を膀胱に戻し、排尿ができるようにした後に膀胱にできた結石を溶かす治療をしていましたが、結石が溶ける前に再度結石が尿道に詰まってしまいました。
飼い主様は、仮に今回結石が溶けても、今後また膀胱に結石が出来て尿道閉塞を起こすリスクがあるならば、尿を排泄する出口を広げて、結石が効率良く尿から排泄されるようにする手術(会陰尿道造瘻術)をしたいとのことでした。
備 考:術後合併症の少ない包皮粘膜を利用した手術を実施しました。術後は尿道閉塞を起こすことなく、順調な排尿状況であるとのことでした。
Case13 会陰尿道造瘻術 猫
来院理由:尿道閉塞を繰り返し、その度に腎臓障害も起こしているので、尿道閉塞を起こしにくくする治療を希望されました。
処 置:日本猫の12歳になるじぇじぇちゃん♂はトイレに行くが、尿がほとんど出ていない。食事も食べず、大好きなおやつも食べない。
検査の結果、膀胱でできた結石が尿道に詰まり、尿が出なくなって苦しんでいました。腎臓機能も低下していたため、尿道に詰まった結石を膀胱に戻し、排尿ができるようにした後に点滴治療にて、腎臓機能が回復させることができました。
飼い主様は、過去にも同様に入院治療して回復することができたが、今後また膀胱に結石が出来て尿道閉塞を起こすリスクがあるならば、尿を排泄する出口を広げて、結石が効率良く尿から排泄されるようにする手術(会陰尿道造瘻術)をしたいとのことでした
備 考:術後合併症の少ない包皮粘膜を利用した手術を実施しました。術後は尿道閉塞を起こすことなく、順調な排尿状況であるとのことでした。