線維腫性エプリス 骨形成性エプリス 良性病変 歯原性腫瘍 棘細胞性エナメル上皮腫 アメロイド産生性歯原性腫瘍

症例紹介

●線維腫性エプリス(骨形成性エプリス)

 エプリスとは“歯肉あるいは歯肉上の限局性病変”を表す臨床用語です。イメージとしてはポリープという用語を想像していただけると理解しやすいかもしれません。ただポリープは悪性病変も含みますが、エプリスはすべて良性病変であるというルールがあります。

 病理検査でエプリスと診断された場合、炎症性なのか、腫瘍性なのか、この2つに分けることで治療方法も違いが出てきます。以下の表で確認してみて下さい。

★炎症性(反応性)エプリス 分類 治療計画
線維性エプリス(最も一般的)
化膿性肉芽腫(まれ)
巨細胞性エプリス(まれ)
反応性外骨症
真のエプリス 腫瘍の局所切除 もしくは
抜歯を含めた歯周病治療の併用
局所切除 もしくは 拡大切除
★腫瘍性エプリス    
線維腫性エプリス
(骨形成性エプリス)
歯原性腫瘍 腫瘍の局所切除
抜歯・歯槽骨掻爬の併用
棘細胞性エナメル上皮腫 転移はしないが、悪性腫瘍のように局所浸潤性と再発率が高い腫瘍なので要注意。
腫瘍を含む顎骨切除が望ましい
※放射線治療が併用される場合もある
アメロイド産生性歯原性腫瘍
(Gardnerら, J Oral Pathol Med, 1996を参考に作成)

 バーニーズマウンテンドッグの男の子 たけるちゃんは、6歳の頃に右下顎の第1後臼歯と呼ばれるところに腫瘤ができたため、当時ホームドクターの先生が肉眼的に認められる範囲の腫瘤を医療用レーザーで切除し、病理検査を実施しています。病理検査の結果は“骨形成性エプリス”という結果でした。
 しばらく腫瘤は肉眼的に確認されませんでしたが、およそ切除後2年経過した頃に当院で口腔内を観察した際、偶発的に同部位に腫瘤を認めました。病理検査により診断がされていることと、腫瘤は緩徐に増大して今回再発していること、転移や顎の骨を溶かしたりすることはないこと、根治的な治療を望む時は抜歯・歯槽骨掻爬が必要となるので、たけるちゃんが腫瘤によって困る事象が起きた時に治療を実施することを提案しました。
 再発が認められた6カ月後に、たけるちゃんが口を引っ掻いて気にする仕草が認められ、腫瘤の軽度の増大も確認されたため、飼い主さまが根治治療目的とした右下顎第4前臼歯及び第1後臼歯の抜歯・歯根膜の除去のため歯槽骨掻爬手術を希望されました。手術後、7カ月が経過しましたが再発は認められず、飼い主様はたけるちゃんが食事や副食を食べる際も支障なく生活できているとのことでした。

写真1
写真2
写真3

 骨形成性エプリスは線維腫性エプリスという歯原性腫瘍に分類されます。転移を起こしたり、局所浸潤性が強くないため、顎の骨が溶して増殖することはないのですが、増大すると表面から出血を起こしたり、歯列を乱すなど、生活の質を落とす原因となります。歯根膜の結合組織が由来と考えられているため、治療には歯根膜を綺麗に除去する必要がありますが、歯根膜は歯根を取り囲むように存在するため、抜歯が必要となります。良性病変であるため、治療をする際はかかりつけの先生と、その子の年齢や体力と、治療する意味をしっかり話し合った上で治療を決めてあげて下さいね。

 

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