消化管内異物 ゴルフボールによる腸閉塞

症例紹介

●消化管内異物(ゴルフボールによる腸閉塞)

 体重が31.2kgシェパードMixの未避妊雌 麗良(レイラ)ちゃんが来院されました。保護犬のため年齢は不詳ですが、おそらく6-8歳くらいの年齢であると思われます。

 主訴は吐き気があり、吐いたものの中にはユリの花と茎も出てきた、食欲も落ちているのとのことでした。

 ユリ科の植物にはユリだけでなく、玉ねぎ、長ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、ワケギなどがあります。ユリの誤食によって引き起こされる中毒症状には、嘔吐などの消化器症状の他に、玉ねぎ中毒で認められる貧血なども考えられます。また麗良ちゃんは半外飼いで、庭に落ちている様々なものを口にする可能性もあり、誤食とは別の疾患が原因である可能性もあります。

 これらのことからユリによる内臓への影響を調べるために血液検査、その他の異物の誤食の確認のためX線検査及び腹部超音波検査を提案したところ、飼い主さまはこれを希望されました。

 麗良ちゃんは血液検査では顕著な異常は認められず、画像検査では胃内に約4cm大の球状の異物、脾臓に約2cm大の腫瘤が認められました。

 これら結果から、麗良ちゃんの吐き気と食欲不振はユリもしくは球状の異物によるものと考えられました。脾臓腫瘤は明らかな転移を起こしていることもなく、破裂を起こしている所見もないことから、本症状の原因としては関連が低いものと考えられました。飼い主さまにはユリの誤食による対症治療と球状の異物に関しては、内視鏡もしくは開腹手術で取り出す事を提案しました。

写真①

 飼い主さまは麗良ちゃんへの麻酔や外科的な負担をかけることを躊躇されており、異物も胃内にはあるが、胃底部と呼ばれる場所にあり明らかな閉塞所見がないことから対症治療のみで経過観察を希望されました。

 対症治療後、一時吐き気も止まり、食欲も改善した麗良ちゃんでしたが、異物を吐き出すことなく治療6日目にして、吐き気が再び現れ、食欲も廃絶してしまいました。X線検査では球状の異物が胃を通過して十二指腸に到達し、そこで閉塞を起こしている所見が認められました。

 飼い主さまは異物の摘出と同時に、良性腫瘍であっても今後破裂するリスクを回避するために脾臓腫瘤の摘出を開腹下手術にて希望されました。

 開腹手術時の所見では、ゴルフボールが十二指腸で閉塞を起こしていました。脾臓腫瘤は周囲の組織とは癒着はなく、孤立性で所属リンパ節の腫大は認められませんでした。

写真②

 手術後、麗良ちゃんは播種性血管内凝固症候群と呼ばれる危険な状態の前段階にまで体調が落ち込んでしまっていましたが、バーニーズマウンテンドッグの女の子 れなちゃんに協力してもらい、輸血治療を実施しました。輸血後もお母さん、お父さんおよびご家族の献身的な介護により、術後2週目にして完全回復を遂げることができました。

 麗良ちゃん、本当に頑張ったね。バーニーズのれなちゃんもありがとうね。麗良ちゃんのご家族も本当にお疲れ様でした!

写真③

 

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