犬の膀胱腫瘍 過形成性ポリープ 病理組織検査

症例紹介

●犬の膀胱腫瘍(過形成性ポリープ)

 10歳のミニチュアシュナウザーの去勢雄 ライカちゃんが最近、散発的な血尿が認められるとのことで来院されました。頻尿の症状はなく、過去の診察では尿検査のみ行い、2週前にも血尿があったとのことでした。ライカちゃんの血尿は、尿路疾患で発生頻度の多い細菌性膀胱炎で認められるものとは少し違う経過であり、尿検査だけでは診断が難しい結石の病気や腫瘍疾患が隠れていないか調べる必要がありました。そこで飼い主さまには、膀胱や腎臓、尿管および尿道などの腎泌尿器系臓器を含めた腹部臓器の超音波検査による画像診断をお勧めしました。

写真①

 腹部超音波検査では、膀胱粘膜に直径5.6mm×高さ6.7mmの乳頭状腫瘤が認められ、腫瘤は膀胱粘膜に限局し、筋層および漿膜に浸潤している所見は認められませんでした。

 その他に左右腎臓に小さな1mm大の結石が複数個存在しており、脾臓の頭側にも8.8×12.6mm大の低エコー性の腫瘤が認められました。

 これらの所見から散発的な血尿の原因は膀胱に存在する乳頭状腫瘤からの出血による可能性が高いことが分かりました。

 膀胱腫瘍は良性腫瘍、悪性腫瘍共に発生しますが、発生頻度として最も多いものが移行上皮癌と呼ばれる悪性腫瘍であり、その他に横紋筋肉腫、扁平上皮癌およびリンパ腫などの悪性腫瘍も報告があります。腫瘍は見た目だけでは良悪の判定は困難ですので、腫瘍の組織を一部採材し、病理組織検査を実施することで確定診断を下すことが重要です。なぜならば、病理組織診断により腫瘍の正体が分かると、治療を行う際に外科治療ならば切除する範囲も違ってきますし、最善の治療が手術ではない結果となるということもあります。

 ライカちゃんの乳頭状腫瘤においても病理組織診断を実施することは治療計画を考える上でとても重要だったのですが、飼い主さまはどんな結果であれ外科治療は積極的には行いたくないという考えの方であること、あくまでも私見ですがライカちゃんの膀胱腫瘤は悪性腫瘍が強く疑われる所見がないことから、飼い主さまと相談の上、病理組織検査による確定診断よりもライカちゃんの血尿を止めることで生活の質を上げることを優先とする治療を開始しました。

 今回のような膀胱の腫瘤にはピロキシカム、フィロコキシブと言われるCOX−2阻害薬と呼ばれるお薬が、腫瘤の増殖や炎症による出血を緩和する効果をもたらす場合があります。ライカちゃんにもこれらのお薬を始めていただき、腫瘤の大きさはほぼ変わらないもののおよそ3週目にして血尿を止めることができました。

 この時点で、また血尿が再発した時は同様のお薬で症状を緩和していくこと、お薬が効かなくなるくらい腫瘤が大きくなってしまった場合は再度治療方法を検討することを前提に飼い主さまは経過観察していく計画を希望されましたが、後日飼い主さまから腫瘤が大きくなってからではなく、小さいうちに治療を開始して、できるだけライカちゃんの負担を減らしたいとの希望が入りました。

 そこでライカちゃんの膀胱腫瘤の治療と病理組織検査を兼ねた膀胱部分摘出術を実施いたしました。手術後の経過は良好で、術後の血尿および頻尿症状はほとんどなく、術創も2週間で抜糸を行うことができました。

写真②

 病理検査結果は“過形成ポリープ”であり、腫瘍病変や悪性所見はないとのことでした。手術後の膀胱の腫れも改善して、血尿もなく、排尿回数は1日7回→4回とまとめておしっこをするようになったとのことでした。調子が良くなって本当に良かった!ライカちゃんお疲れ様だね!!

写真③

 

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