猫の痊瘡 ざ瘡 アクネ 顎ニキビ コメド 毛包 化膿性肉芽腫性皮膚炎

症例紹介

●猫の痊瘡(ざ瘡、アクネ、顎ニキビ、コメド:毛包を中心とした化膿性肉芽腫性皮膚炎)

 7歳 長毛の日本猫 去勢済みの男の子 ヤマトちゃんが来院されました。2週前より顎の下の皮膚が腫れてきた、経過をみていたが良くならないとのことです。
 ヤマトちゃんの顎の皮膚は毛穴に溜まった皮脂が黒ずんで見えました。一部の皮膚には皮脂が溜まり、そこに炎症が起こして赤く腫れ、ボコボコしていました。これらの所見より、顎下のざ瘡と仮診断しました。
 消毒や毛刈り処置、培養検査および真菌検査、抗生物質やアレルギー治療にも使用される消炎剤なども併用しましたが、内服薬による治療には反応がほとんど認められませんでした。

写真①

 飼い主さまには内科治療の反応が乏しいこと、その次の治療としてひどいざ瘡の部分を切除し、切除した組織も念のため病理検査に提出することで腫瘍細胞などが検出されないかどうか調べる治療計画を提案しました。
 飼い主さまは、一度ご家族で話し合い、ヤマトちゃんへの全身麻酔のリスクや負担も納得していただいた上で、この治療を希望されました。

写真②

 ヤマトちゃんは手術後、帰宅してすぐにご飯を食べてくれ、傷口も気にせず、経過が良好なため術後10日目に抜糸を行いました。病理組織検査では腫瘍細胞は検出されず、真皮に広範囲な化膿性肉芽腫性病変が認められたことから難治性のざ瘡であると診断されました。
 その後の様子をお電話でお聞きした時は、手術で剃った毛が生え揃った後もざ瘡の再発はなく、問題ないとのことでした。

写真③

 ざ瘡は顎下や口唇に隣接した皮膚における猫に一般的な皮膚炎です。通常は無症状であり、毛穴に溜まった皮脂が黒ずんで顎の下に黒いゴマが付着しているように見えるのが特徴です。ヤマトちゃんの場合はさらに細菌が二次感染して炎症を起こしていたので、赤く腫れていました。この病態になると痒みや痛みが出ることもあり、後ろ足の爪などで引っ掻くことで局所に傷がつき、ますます病状が悪化する場合もあります。

 猫のざ瘡の病因ははっきりとは解明されていません。人間のニキビと同じ病態であるにもかかわらず、人間のニキビには成長期の男性ホルモンが影響して発生しますが、猫では成長期の若い猫だけがなるとは限りません。皮脂腺とアポクリン腺が特に顎周囲に密集しているからではないかと考えられています。

 ざ瘡の治療は清潔にしていただくことです。今回のような外科手術による治療は一般的ではありません。なぜなら手術でとってあげても、切除した近くに新たにざ瘡ができたり、別の場所に発生する可能性もあることから、根本的な治療とはならないからです。そのため、外科治療を決断される時は、その治療を実施する意味と猫ちゃんの体力を十分に把握した上で、かかりつけの先生とご相談し、決定してくださいね。

 病院嫌いなヤマトちゃん、本当に頑張ったね。お疲れさまでした!

 

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