犬の異所性リンパ節 皮下腫瘤

症例紹介

●犬の異所性リンパ節(頬にできた皮下腫瘤)

 5歳4ヵ月齢になるラブラドールレトリーバーの男の子 ポチちゃんが来院されました。幼少時から存在している右頬の腫れが最近増大してきたとのことです。

 ポチちゃんに右頬に存在する腫瘤は頬と口唇の境界に近い場所にあり、皮下組織の中に2cm×2cm×2cmの大きさで、被膜に覆われるような形態で口腔側の粘膜に浸潤するような所見は認められませんでした。ポチちゃんの皮膚や口腔内に存在するリンパ節は腫大が認められませんでした。

 局所の腫瘤に細い注射針を刺して、腫瘤を構成する細胞の一部を観察する検査では、採取された細胞の大半を成熟したリンパ球が占めており、一部にリンパ芽球(幼若なリンパ球のこと)や好中球、形質細胞と言われる炎症や免疫の刺激を受けると出現する細胞が認められました。

写真①

 以上の所見を踏まえた上で、治療方法をご提案しました。

治療方法 利点 欠点
①経過観察
  • ・悪性腫瘍を疑う所見が乏しいから、腫瘤の増大速度、周囲のリンパ節を経時的に観察、データを採取することでより適切な治療方法を再考できる
  • ・細胞診断だけでは良悪の判定は困難であり、確定診断とならないため、悪性腫瘍であった場合、治療時期を遅らせることになる場合がある
  • ・腫瘤の増大速度が急速であった場合、経過観察中に擦るまたは引っ掻くことで破裂・出血を起こすこともある
②腫瘤のみの
 摘出手術
  • ・細胞診断検査に基づいた治療計画であり、診断が正しければポチちゃんへの負担は最小限で、さらに腫瘤の増大による破裂や出血も回避できる
  • ・摘出した組織を病理検査出すことで、確定診断名を出すことができる
  • ・全身麻酔が必要であり、費用もかかる
  • ・悪性腫瘍だった場合、再度の拡大切除手術もしくは追加治療が必要となる場合もある
③腫瘤と周囲
 の正常組織
 を含む口唇
 全層の広範
 囲切除手術
  • ・仮に悪性腫瘍であった場合でも最大の治療効果が期待出来る
  • ・どんな結果であれ再手術となる可能性が低い
  • ・全身麻酔が必要であり、費用もかかる
  • ・良性腫瘍だった場合、切除する範囲としては切除し過ぎなのでポチちゃんへの余計な負担をかけることになる

 ポチちゃんの飼い主さまは手術による早期摘出と確定診断を強く望まれていました。手術の術式に関しては最終的には当方の判断にお任せするとのお言葉をいただきましたので、手術中に腫瘍の明らかな悪性所見が認められる場合を除いて、②の治療方法とらせていただく事をご説明しました。

 術中所見においても周囲の組織に浸潤している所見は認められませんでした。ポチちゃんの術後の覚醒はとても良好でしたが、術後摘出した部位からの出血により縫合部の皮下に血が溜まってしまいました。溜まった血が一度噴出してしまったこともあり、ポチちゃんに負担をかけてしまいましたが、現在は元の通りのイケメンに戻りました。病理検査では皮下の深部に存在していたリンパ節が炎症を起こして大きくなってしまったこと、組織所見からは炎症の原因は特定できないが、摘出したリンパ節には腫瘍性病変は認められないとのことでした。摘出することで根治となります。

 ポチちゃん苦労かけてごめんね。良い結果でよかった!イケメンポチちゃんまた遊びに来てね。

写真②
写真③

 

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