猫の乳腺腫瘍(良性)乳腺のしこり 線維腺腫 良性乳腺腫瘍

症例紹介

●猫の乳腺腫瘍(良性)

12歳になる未避妊雌のスコティッシュフォールド ココアちゃんが当院に紹介来院されました。1カ月前に発見した乳腺のしこりが急速に増大し、最近自壊してしまったため困っているとのことです。(写真①)

写真①

腫瘤は右の第3乳腺に大きさ3.5×3.5×3.0cmで存在しており、表面の一部が自壊し、底部に固着は認められませんでした。また、反対側である左側第4乳腺にも1.0×1.0×1.0cm大のしこりが認められました。領域リンパ節の腫大はなく、約1週間前にかかりつけの先生の病院で実施したX線検査では遠隔転移の所見はありませんでした。一般状態は良好で、ご飯もしっかり食べているとのことです。
以上の所見から、ココアちゃんにとって最善となる治療を飼い主と相談しました。

ココアちゃんの飼い主様は自壊してしまった腫瘍を早く手術で取り除く事と、手術の範囲に関しては腫瘍が出来た乳腺のみを切除することを希望されていました(傷口と術後の痛みを最小限にするため)。
ただココアちゃんの乳腺の腫瘍は病理検査を行っていないため、良性なのか悪性腫瘍なのかは不明であり、仮に発生率が高い悪性乳腺腫瘍であった場合、傷口を小さくする手術では再発する可能性や再度手術をすることに対するココアちゃんへの負担および寿命を縮める可能性がありました。

猫の乳腺腫瘍の特徴は、雌猫で起きる腫瘍の中で3番目に発生が多い腫瘍でその発生率は約17%と言われ、50%以上が多発性です。品種ではシャムネコさんが注意です(他種と比べて発生リスクが2倍)。
特に重要なのが、猫の乳腺腫瘍は85-93%が悪性腫瘍であり、そのほとんどが転移を起こして死の転機もたらす攻撃的な性格をもつ事です。予後(治療を行うことでもたらされる効果や余命に対する見通し)に関わる項目として、腫瘍の大きさ・進行度(ステージ)・組織学的グレード(腫瘍の悪性度、病理検査をすると分かる)・手術の範囲(広範囲に切除したか)があります。
治療方法として、外科治療が第一選択治療である場合が多く、ほとんどの症例において片側または両側乳腺全ての摘出が必要な場合が多いです。他に化学療法や放射線療法がありますが、主に補助的な効果があることが報告されています(身体中に散らばったがん細胞を減らす、手術が出来ない子に対し痛みや出血を和らげるなど)。猫において乳腺腫瘍の手術と同時に実施する避妊手術が、再発率の低下や生存期間を向上させることは証明されていません。
ココアちゃんは12歳と高齢となってきましたが、内臓機能も問題なく、まだまだ元気に今後も過ごせる体力もあることから、お父さんは大きい腫瘍のある右側乳腺の全摘手術を希望されました。
手術は病理診断がないことから、念のため自壊した腫瘍の底部筋肉の一部を含めて右側乳腺全摘出を実施し、腋下リンパ節は触診上で腫大が認められないため摘出を実施しませんでした。(写真②)

写真②

病理診断は“線維腺腫(良性乳腺腫瘍)”で境界明瞭で取りきれており、悪性所見なし、領域リンパ節である右鼠径リンパ節には腫瘍病変は認められないとのことでした。今回の手術により根治となります。
術創は皮下の漿液貯留が認められ、一部の皮膚に舐めこわしがあったものの、適切な処置で術後2週目に完全抜糸ができました。ココアちゃんの飼い主様は自宅での献身的なケアが条件となりますが、日帰り手術で帰宅後からココアちゃんが食事を摂られ元気にしてくれたこと、術後2週目で無事抜糸ができたことにとても満足して下さいました。(写真③)ココアちゃん、本当にお疲れさまでした!反対側の乳腺にあるしこりも小さいままとのことで安心しました。大きさに変化があったら、ご連絡くださいね。

写真③

 

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