犬の脾臓腫瘤(過形成)

症例紹介

写真①
写真①
垂れ目が可愛いミラクルちゃん
●犬の脾臓腫瘤(過形成)

12歳7カ月になるポーチュギース・ウォータードッグのミラクルちゃんが健康診断を希望されて来院されました。避妊済みの女の子で現在、一般状態も良好です(写真①)。

ところが、健康診断でお腹の中にある脾臓という臓器に腫瘤ができていることが分かりました。腫瘤の大きさは4.3×4.4cm、実質性で脾臓の尾側に存在し、周囲の臓器への癒着や転移を起こしている所見は認められませんでした。血液検査や尿検査、心臓超音波検査にも異常はありませんでした。

以上の検査所見から今後の治療計画についてお話し合いをしました。

治療
計画
目的 利点 欠点




1カ月後に再検査して、増大傾向を調べることで良悪の暫定的な診断を行い、年齢および体力と相談して治療を再考する 12歳という年齢を考慮、理に叶った治療計画 ・悪性腫瘍ならば治療のスタートが遅れてしまうことも
・良性病変もしくは悪性腫瘍に関わらず、経過観察中に腫瘤が破裂してしまうリスクはある







開腹手術により、脾臓ごと腫瘤を摘出して病理検査を行う ・治療だけでなく、診断名が分かり、より精密な治療計画が立てられる
・良性もしくは悪性腫瘍に関わらず、腫瘤が破裂するリスクを回避できる
・費用がかかる
・手術と麻酔に耐える体力が必要
・脾臓を失うことでヘモバルトネラなどの感染症に感染しやすくなることもある



自然のままに 負担が最も少ない やっぱり治療を!と思った時には不利な状況となっている

ミラクルちゃんの飼い主さまは、腫瘤が破裂するリスクを回避したい、歳をとってもずっと元気に過ごしてもらいたいという願いがあり、②手術と病理検査を希望されました。

術中所見では腫瘤は周囲との癒着や破裂もなく、所属するリンパ節にも腫大は認められませんでした(写真②)。

写真②
写真②

術後の覚醒は良好で、その日のうちに帰宅されました。飼い主さま曰く、術後に帰宅した夜は痛み止めを使っていても、お腹の傷が痛かったみたいでよく眠れていない様子でした。次の日の朝はご飯も食べ、ちゃんと眠れるようになり、1週間で手術前の元気さに戻りましたとのことでした(写真③)。

写真③
写真③

ミラクルちゃんの病理検査結果は 過形成 であり、非腫瘍性の病変でした。

脾臓の腫瘤は2/3は腫瘍性疾患であり、さらにその2/3は悪性腫瘍であるという報告があります。脾臓の悪性腫瘍の50%は血管肉腫であり、血管肉腫および様々な肉腫の生存中央値4カ月(Spanglerら, 1994)、病気を発見してから1年以内に亡くなってしまう確率が80~100%という報告もあります。

脾臓腫瘤は悪性腫瘍であることが多く、そのいずれもがとても予後の悪い報告が多いのですが、“過形成もしくは過形成性結節”は非腫瘍性の疾患であり、何らかの炎症刺激により脾臓の一部が反応性に腫大したものとされています。摘出することで根治的な治療となります。

ミラクルちゃん、本当に良かった!奇跡を起こすミラクルさん!!いつも元気をありがとうね。

→症例紹介一覧へ