会陰ヘルニア 肛門のまわり 排便障害 急性腎不全 未去勢

症例紹介

●会陰ヘルニア(ポリプロピレンメッシュを用いた整復術)

会陰(肛門のまわり)ヘルニアとは直腸を支持する筋肉が萎縮することでヘルニア孔ができ、その孔を通って骨盤・お腹の中にある臓器が皮下に脱出している病態をいいます。ちなみにヘルニアとは、体内の臓器などが本来あるべき部位から脱出した状態を指します。中高齢の未去勢の雄犬で発生が多く、好発犬種としてウェリッシュ・コーギー、マルチーズ、ミニチュアダックスフント、ボストンテリア、トイ・プードルなどがこれまでに挙がっていますが、海外では大型犬に発生頻度が高いことから、好発犬種はその国の人気犬種にも左右されるとの報告があります(Hosgoodら, 1995)。

会陰ヘルニアの内容は、主に直腸、骨盤腔の中の脂肪組織、前立腺、膀胱があり、重篤な場合は小腸や子宮などの肛門よりも遠い場所にある臓器まで脱出してしまう場合があります。そのため、脱出した直腸内の便が正常に排泄できず、水分が吸収されて硬くなり、軟便などの柔らかい便を少量ずつしか排泄できなくなります。膀胱が脱出してしまった場合、尿道が屈曲して尿が排泄できずに急性腎不全をおこすこともあります。

会陰ヘルニアは根治的な治療は①手術しかありませんが絶対不可欠なものではありません。わんちゃんが麻酔に耐えられない病気を持っていたり、飼い主様がどうしても手術に抵抗がある場合は、繊維質の多い食餌に変更したり、便軟化剤を用いたり、定期的に指で便をかき出してあげることで②緩和的な治療が実施されます。

  利点 欠点
①外科手術 ・根治的な治療
・重篤および緊急時の場合も適応可能
・費用がかかる
・麻酔が必要
②緩和治療
(便かき、
 食餌療法)
・手術と比べ費用少ない
・麻酔がかけられない子も適応可能
・定期的に便かきが必要であり、根治治療ではないため、費用がかかる場合もある
・痛んだ腸に穴があき、骨盤内に便が漏れて細菌感染やショックで死亡する事故も

今回、当院に来院されたクッピーちゃんは10歳のチワワさんで、去勢はしていない男の子です。肛門まわりの皮膚が腫れていて、今日から急に排尿ポーズをとるが尿が出なくなり、吐いているとのことでした。お話をきくと以前から排便障害があり、少しずつしか便が出ないそうです(写真①)。

写真①
写真①

画像検査にて肛門まわりの皮膚が腫れた原因は、会陰ヘルニアを起こし、ヘルニア孔から直腸と膀胱が脱出していたため、排便・排尿障害を呈してしたことが分かりました(写真②)。

写真②
写真②

クッピーちゃんのお母さんは、手術しないにこしたことはないけど、クッピーちゃんの病態が重篤であり、尿が出なくなることによる腎不全のリスクを考えると手術してあげなければと思ったそうです。

後日、クッピーちゃんは会陰ヘルニアの整復手術、脱出してしまった腸および膀胱の整復および再脱出を防ぐ為の固定術、去勢手術を希望されました。翌日に退院できたのですが、その後出血性の大腸炎を起こし(手術のストレスなどの免疫力低下が原因かもしれません)、再度入院となってしまったクッピーちゃん。トホホだったね…(写真③)。

写真③
写真③

現在は排便・排尿も絶好調で、嫌いだったドッグフードも選り好みなく食べる元気っ子さんに。クッピーちゃん肥満に注意だね。

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