悪性メラノーマ 悪性黒色腫

症例紹介

●皮膚の悪性メラノーマ
写真1:腫瘤の外貌
写真1:腫瘤の外貌

およそ10歳になるMIX犬の子が来院されました。避妊の手術は済んでいるという女の子です。飼い主さま曰く、左眼の側にある皮膚に腫瘤ができて、急に大きくなってきている、眼に影響が出る前にどうにかしたいとのことでした。

身体検査では腫瘤の大きさは7mm程度で境界明瞭、ドーム状~ややいびつな形をしています。左目の裏や顎の下にリンパ節がありますが腫れている様子はありません。

飼い主さまには、

  • ① 腫瘤が転移していないか画像診断や血液検査を行い、細胞診断まで行なう。必要ならば腫瘤の一部を病理検査出して、診断結果が出てから、治療方針を決める
  • ② 腫瘤を切除し、病理検査を出すことにより、治療と病理診断を一度に行なってしまう、病理結果に応じて追加治療も考慮する

以上の2つの治療方針を提案しました。それぞれの治療方針の利点欠点についても、以下の表の通り説明致しました。

  利点 欠点
•腫瘤がどのくらい進行しているかが分かる
•同時にその子の体力などの詳しい一般状態が把握できる
•以上の検査結果から、その子にあった治療計画が立てられるので過剰治療、治療の見積もりミスが防げる
費用がかかる
•治療も診断も兼ねているので費用が少なくて済む
•腫瘤が良性腫瘍、低悪性度の腫瘍なら根治となる場合がある
検査結果によって、再度治療が必要となる場合がある

飼い主様は悩まれましたが、②の治療方針を選択され、後日腫瘤の切除生検を行いました。術後6日目に術創の癒合が良好なため抜糸を行ないました。目の側の手術でしたが、見た目の変化も無く、仕上げることが出来ました。

写真2:切除した腫瘤
写真2:切除した腫瘤
写真3:術後6日目の外貌
写真3:術後6日目の外貌

病理検査結果は、“悪性黒色腫(悪性メラノーマ)疑い” 腫瘍細胞の悪性度である核分裂指数は3/10hpfであり、全体の細胞の異型性は軽度だが悪性度の高い巨核の異型細胞も少数混在している、腫瘍細胞が浸潤性を示して増殖している様子はない、腫瘤自体は完全に切除されている、切除した組織の中に存在する血管内に腫瘍が浸潤していることもない とのことでした。
以上の結果を踏まえて、飼い主様には今後、この腫瘍が再発したり転移を起こしたりする可能性は低いが、注意して経過を観察していきましょうというお話になりました。

黒色腫は、発生する部位により臨床経過が比較的はっきりしています。口腔内、口唇、足の先端(爪床)は一般的に悪性(英名:マリグナント メラノーマ 又は 略して メラノーマ)であり、皮膚の毛が生えている部位は一般的に良性(英名:メラノサイトーマ)であることが多いです。悪性黒色腫の場合、病理検査において腫瘍細胞の有糸分裂指数が3個未満であること、リンパ節やリンパ管内浸潤の無いことはその子の予後に影響することが解明されています。
放射線治療にも反応がよく、化学療法では白金製剤が有効とされています。ただ、それぞれの治療には利点欠点がありますので、必ずホームドクターの先生に詳しいお話を聞いて下さいね。

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